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管理運営事項と職員団体

ガイド:正常な職員団体との関係の根拠となる資料を集めました。管理運営事項とは、「組合との交渉の対象にならない事項」を指します。ここを明確にできないと、ズブズブの関係になります。翻って、枚方市の労働協約はどうなっているでしょうか?

● 管理運営事項とは

● 職員団体とは


● 管理運営事項とは

 地方公共団体(地方公営企業)の事務の管理及び運営に関する事項(地公法第55条3項、地公労法第7条)をいい、地方公共団体の機関がその本来の職務又は権限として、法令、条例、規則その他の規程、あるいは地方公共団体の議会の議決に基づき、もっぱら自らの判断と責任に基づいて執行すべき事項であるとされている。

 管理運営事項であるかどうかは、当局と職員団体(労働組合)との交渉(団体交渉)に際し問題となる。つまり、職員団体(労働組合)と地方公共団体(地方公営企業)の当局との交渉(団体交渉)の対象とはならないとされているからである(地公法第55条第3項、地公労法第7条但書)。

管理運営事項  具体的には、例えば、次の様なものが考えられる。

(ア) 地方公共団体の組織に関する事項

(イ) 行政の企画、立案及び執行に関する事項

(ウ) 予算の編成及び執行に関する事項

(エ) 議案の提案に関する事項

(オ) 職員定数の決定及び配当に関する事項

(カ) 任命権の行使に関する事項

(キ) 公租公課の賦課徴収に関する事項

(ク) 地方公共団体又はその機関が当事者である争訟に関する事項

(ケ) 財産又は公の施設の取得若しくは設置、管理又は処分に関する事項

 

交渉事項から除外した理由

(1)交渉(団体交渉)が、職員団体(労働組合)がその構成員の勤務条件の維持改善を図るため地方公共団体(地方公営企業)の当局と勤務条件について共同決定するため統一的に行うものであるのに対し、管理運営事項は、住民の信託によって、住民の福祉の向上のために行われる地方公共団体の機関自らの判断と責任に基づいて、法令、条例、規則その他の規程、あるいは地方公共団体の議会の議決にのっとり執行されるべきものであるため、職員団体(労働組合)との共同決定になじまないものであり、また、職員団体(労働組合)と責任を分かち合うことのできない事項であるゆえに、これを管理運営事項として交渉事項の対象外とするものと決定したのである。なお、労働組合法には類似規定はない。

(2)管理運営事項は民間における経営権と類似のものであると言われているが、民間の経営権は私的所有としてのものであり、一定の制限に反しない限り、使用者の任意の判断で団体交渉事項とすることは可能であるのに対し、管理運営事項は、地方公共団体の職務、権限が、住民の信託によっているものであり、それは、住民全体の福祉の向上のためになされなければならないものであるということ、また、その職務、権限の執行は、地方公共団体の当局者が責任をもってなさねばならないことから法によって交渉事項とすることを禁じたものであり、当局の任意に、あるいは自己の責任において管理運営事項を交渉の対象にすることは許されないものである。

 しかしながら、管理運営事項について職員団体(労働組合)と事実上の話し合い、最終決定件を当局が留保した形での協議等についてまで法律は禁止したものではないと考えられている。

 

管理運営事項と勤務条件

 管理運営事項そのものについては交渉の対象にはならないが、管理運営事項の処理の影響を受け変更された勤務条件がある場合においては、その勤務条件に関する限り交渉の対象事項となるものである。

【行政実例】

○管理運営事項と労働条件の競合

 団体交渉に関しては、地公労法第7条において労働組合法に対する重要な例外、すなわち地方公営企業の管理及び運営に関しては、団体交渉ができないことを規定しているが、これは、地方公営企業の管理運営は住民の総意によって信託され、法令によってその義務、権限を定められた地方公共団体の当事者が責任をもって行うもので、組合との間の団体交渉によって決定すべきものでないとする趣旨にでたものである。具体的にある事項が管理運営に関するものであるかどうかの判定にはいろいろ困難な問題もあるが、同一事項で管理運営と同時に労働条件にも関するものであるときは、その労働条件に関する面が団体交渉の対象となるものである。(昭27.9.13労発第165号)

○定数条例と団体交渉

問: 職員の定数条例改正案の決定が団体交渉の対象となりうるか。

答: 地方公営企業の職員の定数条例の改正に当たって、その改正案の決定及び議会への提出は、企業の管理運営に属するものであって、それ自体は団体交渉の対象事項ではない。したがって、その決定及び提出について団体交渉を求められたにも拘らずこれを拒否したとしても直ちに不当労働行為とはならない。

但し、定数条例の改変によって職員の労働条件に変更を生ずることが当然に予想される場合においては、その労働条件について団体交渉を行い得ることは、定数条例改正の成立の前後を問わず、もちろんのことであり、又その際、団体交渉の過程において職員の定数について論ずることを妨げるものではない。(昭29.4.22労発第127号)

【判例】

○人員整理と団体交渉

人員整理の問題は市政運営上における施策であって、市政の適正な運営を期するため必要と認めておこなわんとする事項であり職員団体においてこれを容喙し得べき限りではない。ただ人員整理の施行にあたりできるだけ職員団体の意見を参酌せられるべき旨の陳情をなすことは自由であるが右事項をもって団体交渉の目的となしえないことは地方公務員法第52条第1項、第55条(注 現行第52条第1項、第55条第1項、第3項)の規定によって明らかである。(京都地裁 昭35.3.25 昭29(行)14号)

○管理運営事項と団体交渉

公労法8条が労働組合に対し広く労働条件に関する事項について団体交渉権を付与しながら、その但書において公共企業体等の管理運営に関する事項を除外したのは、労働組合が団体交渉及びその結果である労働協約を通じて、労働条件向上の必要の限度を越えて企業の管理運営に容喙し、公共企業体等の正常な運営を最大限に確保するという公労法1条の目的にそむく事態が生じないようにすることにあるものと解される。そうだとすると、労働組合が団体交渉を求めている事項が一応公共企業体等の管理運営に関するものであっても、その実は管理運営の結果生じる労働条件を問題にしている場合が少なくないから、形式的な判断で団体交渉を拒否してはならないことはもちろんであって、一般には、交渉途中において管理運営事項そのものをも問題にしていることが判明した時点で、団体交渉により解決すべきでないとしてこれを交渉の対象から除外するのが相当な取扱である。

しかしながら、労働組合が締結を求める労働協約の内容それ自体が労働条件に関するものでなく、あるいは労働条件向上の必要の限度を越えており、しかも公共企業体等の管理運営に容喙(注:ようかい=くちばしを挟む)することを内容とするものであるときは、公共企業体等がかかる労働協約を締結しそれに拘束される事態となると事業の正常な運営は確保されないこととなるから、公共企業体等は労働組合との団体交渉に入ることをも拒否することができると解するのが相当であって、かかる団体交渉の拒絶をもって違法とすることはできない。

したがって、労働組合が要員の配置を求めるのに対し、公社が企業経営上の観点から要員の配置に代わる措置をとることは可能であって、公社が組合の求める要員配置の措置をとらないからといって、組合の団体交渉権を否定したことにならなく、また、勤務時間、諸休暇の取得などの労働条件について締結された労働協約の実施について問題があるときは、労働組合は公社に対し必要な措置を求めることができるが、この場合でも、公社は企業経営上の観点から要員配置に変わる措置をとることができるわけであるから、これらの場合に労働組合があくまでも要員の配置を要求し他の措置を排除するのは、労働条件向上の必要の限度を越えて公社の管理運営に容喙するものといわねばらない。(東京高裁昭56.9.30 昭44(ネ)3153号 最高裁昭62.2.19)

 


● 職員団体とは

 

(1)公務員の労働基本権

 公務員は,公共の利益のために公務に従事しているわけですが,勤労者として自己の勤務を提供することにより給与の支給を受けている点においては,一般の勤労者と異なるところはないため,憲法第28条の「労働基本権の保障」は基本的には公務員にも及ぶものと解されています。

 しかし,実質的な使用者が住民全体であるという地位の特殊性と,全体の奉仕者としてその利益のために働いているという職務の公共性という点において,一般の勤労者と性格が異なっています。

 そのため,公務員は,正常な業務運営を阻害したり,執務能率を低下させる争議行為等(ストライキ,サボタージュ等)が禁止されるとともに,教職員の勤務条件などは条例等で定められるほか,労働基本権が法により一定の制限を受けています。

 これらを表にすると概ね次のようになります。

職員区分

労働関係に
係る基本法

労働三法

団結権

交渉権


















調













一般行政職員

地方公務員法

地方公務員法

×

×

×

×

教育職員

教育公務員特例法ほか

×

×

×

×

現業職員

地方公営企業労働関係法ほか

×

(参考)

民間企業

労働三法

○印 〜適用  △印 〜一部(制限)適用  ×印 〜禁止されている・適用除外 

―印 〜法的に適用されない(例:教育職員は職員団体を組織できるが,労働組合を組織できない)

 

 

(2)職員団体とは

 一般職の職員のうち、警察職員、消防職員及び企業職員を除く職員(以下「職員」という。)が、その勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体をいう(地公法第52条、地公企法第39条、地公労法附則第4項)。

 職員団体の目的

 職員団体は,「職員がその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体」です。より具体的には,職員の経済的地位の維持または向上を目的として,法令等に基づいて当局と交渉を行うことができる団体です。ただし,民間企業の労働者で組織される「労働組合」とは異なり,前述した公務員としての職務の性格上,職員団体は労働組合と同様の権利が認められておりません。

 ここでいう「勤務条件」とは,給与及び勤務時間等のように,職員が当該地方公共団体に就職するかどうか,又は引き続き勤務するかどうかを決定しようとする場合に,通常,誰もが考慮する事項であり,具体的には,給与制度,勤務時間,休日,休暇制度に関する事項及び職場環境に関する事項などがあります。

 また,「当局」とは,職員に対し使用者である地方公共団体の機関で,交渉事項を適法に管理し,又は決定できる機関をいい,教職員の勤務条件については,管理・決定権限を有する「教育委員会」が当局となります

 なお,教職員人事に関する事項,校務分掌の決定,教育課程の編成など,行政上の企画・立案及び執行に関する事項(いわゆる管理運営事項)は,当局が住民の負託を受けてもっぱらその責任と権限において執行すべきものであって,交渉の対象とすることはできません。(地方公務員法第55条第3項)

 これにより,職員団体が行政運営に介入し「職員の勤務条件の維持向上を図る」という職員団体本来の使命を逸脱しないようにされているところです。

 

(3)職員団体への加入・非加入等について

 教職員の職員団体への加入・非加入等については,「職員は,職員団体を結成し,若しくは結成せず,又はこれに加入し,若しくは加入しないことができる。」と規定されています。(地方公務員法第52条第3項)

 これは,職員団体を結成することも結成しないことも,職員団体に加入することも加入しないことも職員の任意であるということを意味しています。

 また,職員団体に加入した場合においても,脱退することは自由であり,脱退の自由を職員団体の規約で制約することはできません。(行政実例 昭35.12.27 自治丁公発第84号)


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