原告補助参加人 準備書面


平成17年(行ウ)第142号不当利得金返還(住民訴訟)請求事件

原告 前田敬暢

被告 枚方市長 中司宏

補助参加人 高橋伸介、池上典子、伏見 隆

原告補助参加人 準備書面    

平成18年5月23日

 

大阪地方裁判所第7民事部 合2A係 御中

                             補助参加人 高橋伸介

冒頭事件について、原告補助参加人は、下記の通り弁論を準備する。

 

(1)「さいたま市旧大宮市議報酬等支払差止等請求事件」(さいたま地裁平成14年10月16日判決)において、裁判所は、「報酬、期末手当及び費用弁償のほかに原告主張の期末手当加算措置なるものが独立の項目として支給されていることを認めるにたる証拠はない。」「原告が」「指摘するところのものは」「報酬月額に加えて報酬月額の100分の20を乗じて得た額を規準として、期末手当を算定することを指しているものと解される」「しかしながら地方自治法203条4項は普通地方公共団体は条例でその議会の議員に対し期末手当を支給することができると規定しているのであるから、本件報酬条例の定めに従い、期末手当の算定に当って、上記の加算をしたとしても、それは法律上の根拠に基づくものと評価できるのであって、これを違法とすることはできない。」と判断されておられます。

(2)しかしであります。上記事件とは異なり、枚方市の場合は、「役職者加算制度」が議員の期末手当に導入されたのであります。地方自治法(以下、地自法という)204条2項の「管理職手当」もしくは「役職手当」を議員全員に実質上支給しているのであり、地自法204条の2「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、これを第203条第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない。」という規定に鑑みると、枚方市報酬及び費用弁償条例2条3項に基づいたとしても、本件「加算部分」の支給は、地自法204条の2から違法の評価を受ける事になります。

 枚方市の場合は、下記のとおり、報酬や期末手当及び費用弁償の他に、「管理職手当」もしくは「役職手当」なるものが、実質上、独立の項目として支給されているのであります。

(3)なお、「実質上」の判断が必要になります所以は、地自法の厳格な規定の他に、昭和31年9月28日付「通知」には、「非常勤職員に対する報酬額につき、期末手当を考慮して、6月、12月に支給する額を他の月に比して多くするような規定はなすべきではない。」とございます。

また、平成8年3月13日付「決定」には、「非常勤の職員に対し通勤費用相当分の費用弁償を支給できることとする取扱いは、通勤費用が持つ費用弁償になじむ性格に着目したことによるものであり、これにより非常勤の職員に対し、常勤の職員に対し地方自治法第204条第2項により支給することができるとされている各種の手当の支給を認める趣旨ではないから、同法第203条の非常勤の職員に対し、同条第4項により支給することができるとされる手当以外の手当を支給することはできない。」とございます。

例外規定であります地自法203条4項の議会の議員に対する「期末手当」につきましては、他の手当が含まれていないか、なお一層、実質面から厳格に判断されなければならないところでございます。

 

 被告枚方市長は、平成18年1月31日付被告「準備書面」1において、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」を地方議員における期末手当の「加算率」の根拠とされています。

しかしであります。地方議員の報酬・手当に係わる根拠は、地自法第203条であり、地自法を無視し、議員における期末手当の加算部分のみを国会議員と同様な運用とする事には甚だ無理があるところです。

無理がある事は、予算特別委員会(平成16年3月18日)において、市議会事務局庶務課長が、「平成2年度は試行的に一律6%加算することとし、市長などの特別職及び市議会議員についても同様に6%の加算がされました。そして、平成3年度からは、人事院勧告に準じて20%の範囲内の加算を行いまして、市長などの役職及び市議会議員についても、国会議員とは異なりますが、同様に加算を行うこととし、所要の条例改正がなされ、現在にいたっております。」とご答弁いただいております事から、明らかでございます。

市議会事務局庶務課長が、「国会議員とは異なります」と言及しておられますように、地自法と「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」は、別次元の法律でございます。

所要の条例改正がなされた議会におきまして、市長公室長が、「枚方市報酬及び費用弁償条例の第2条第2項の改正でございますが、職員の期末手当について御説明申し上げました役職者加算制度を、議員の期末手当にも導入させていただく」と答弁されているところであります。

以上からいたしまして、被告枚方市長が、上記「準備書面」1において、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」を枚方市議会議員における期末手当の「加算率」の根拠とされているのは、他の地方公共団体における理由でありまして、国会議員と同様な運用をしているという説明は、枚方市においては、甚だ無理があるところです。

そのため、枚方市の場合は、報酬・期末手当及び費用弁償の他に、「管理職手当」(地自法204条2項)もしくは「役職手当」なるものが、実質上、独立の項目として支給されているのであります。

 

(1)地自法上、枚方市議会議員は特別職非常勤職員の位置づけとなり、報酬については「枚方市特別職報酬等審議会条例」により市長の諮問に応じ、審議される事となっており、ある程度の客観性が担保されているところであります。

しかしであります。議員の期末手当20%加算については、条例上の根拠としての「枚方市報酬及び費用弁償条例2条3項」を行政と議会だけで決められました。地方公務員という身内に対する「お手盛り」であります。また、議会内での「お手盛り」でもあります。

そこで、補助参加人高橋伸介は、平成14年9月本会議で、報酬審議会にはかるべきであった旨の指摘をさせていただいております。

指摘に対し、被告枚方市長からは、「市議会議員の期末手当の加算率及び支給率についてのご質問にお答えいたします。本市の市議会議員に支給される現行の期末手当の支給率や加算率につきましては、人事院勧告に基づき、又社会経済情勢や他団体との均衡などを総合的に考慮して定めている」とのご答弁をいただいております。

(2)被告枚方市長が言う当該「人事院勧告」の「給与勧告の骨子」には、「ア 期末手当」とは別項目で、「イ 新たな加算措置の導入」として、「民間の特別給の支給状況を踏まえ、係長級以上の職員に、職務段階等に応じ、手当額算定の基礎額に棒給及びこれに対する調整手当の合計額の20%以内の額を加算」とあります。

「民間の特別給の支給状況を踏まえ」、「職務段階等に応じ」、加算するというのでありますから、民間で言う「役職手当」、地自法で言う「管理職手当」を、市議会議員という役職段階にある者の全員に、その役職段階にない者と区別して支給したのが、本件「加算部分」であります。

手当額算定の基礎額に加算してみましても、結局は、枚方市の場合は、「人事院勧告」に基づいている以上、「期末手当部分」と「違法手当部分」が実質的に分離できます。地自法203条、204条、204条の2の趣旨が実質的かつ厳格に「違法支給」がないかを判断すべきであることを要請しているところであります。

枚方市の場合は、報酬・期末手当及び費用弁償の他に、「管理職手当」(地自法204条2項)もしくは「役職手当」なるものが、実質上、独立の項目として支給されているのであります。

 

議員の期末手当20%加算を議会において質問するなかで、「市議会議員の期末手当における支給率の改定状況と加算率について」という資料(丙第1号証)を平成16年1月23日に議会事務局より受け取りました。

この行政側資料(丙第1号証)では、原告が違法と主張する「加算部分」は全て「役職加算」すなわち「役職手当」「管理職手当」(地自法第204条2項)とされ、実質上「期末手当」とは独立の項目として取り扱われているのでございます。

したがいまして、被告枚方市長が、同上「準備書面」3で申し述べている『「本件20%加算部分」の支給は適法』であるとする根拠は明確に失われているものであります。換言しますと、『「加算率」は「管理職手当」(役職手当)ではない』とする根拠は明確に失われているものであります。

補助参加人が冒頭で紹介させていただきました「さいたま地裁平成14年10月16日判決」におきまして、裁判所が、「報酬、期末手当及び費用弁償のほかに原告主張の期末手当加算措置なるものが独立の項目として支給されていることを認めるにたる証拠はない。」とのご判断を示されている争点におきまして、枚方市の場合、枚方市議会議員の「期末手当加算措置」は、「役職者加算制度」であり、すなわち「役職加算」であり、実質的には期末手当とは別の独立の項目としての「管理職手当」もしくは「役職手当」が支給されている証拠が存在するのであります。

よってであります。枚方市の場合は、報酬・期末手当及び費用弁償の他に、「管理職手当」(地自法204条2項)もしくは「役職手当」なるものが、実質上、独立の項目として支給されているのであります。

 

 

(1)以上からしまして、被告枚方市長が同上準備書面2(6)で申し述べている『「本件20%加算部分」を含めすべて、自治法第203条4項の「期末手当」であり、この期末手当の支給については、本件条例で定められている。したがって、この支給が地方自治法第204条の2に違反していないことは言うまでもない。』とする根拠は明確に失われているものであります。

枚方市においては、上記のとおり、報酬・期末手当及び費用弁償の他に、「管理職手当」(地自法204条2項)もしくはそれに類する「役職手当」なるものが、実質上、独立の項目として支給されているのであります。

(2)なお、補助参加人高橋伸介を含めた枚方市議会議員36名が「悪意」の受益者であることは、「本件20%加算部分」が「管理職手当」(地自法204条2項)もしくはそれに類する「役職手当」であり、その支給が地自法204条の2に明らかに違反している事から明瞭でございます。

 

6 

(1)補助参加人の上記主張の正当性は、被告の平成18年5月12付「準備書面」に対する反論によりさらに明瞭になります。

(2)被告枚方市長は、同上準備書面1(1)において、「平成2年12月、人事委員勧告を受けて、職員の期末手当および勤勉手当の額の算定方法が変更された際、これと同様の算定方法を採る国会議員の期末手当の例に倣って」と申し述べておられます。

しかしであります。朝日新聞平成17年6月25日付記事(丙第2号証)には、「国会議員の場合は、国会法で、中央省庁の事務次官をはじめ一般職の国家公務員の給料の最高額と、同等以上の歳費を受けると定められている。これに基づいて、国家公務員の期末手当で加算が実施されたのに合わせ、73年に25%、90年からは45%の加算をしている。しかし、地方議員の場合、期末手当の加算について根拠となる法律はなく」とあります。

そこで、仮に、であります。被告枚方市長が同上準備書面1(1)において申し述べている「国会議員の期末手当の例に倣って」という事が、仮に枚方市議会議員の場合の加算の根拠であるといたしましても、次のように反論ができるところであります。

同上記事(丙第2号証)によりますと、国会議員の場合は、「国会法」という根拠をもって、国家公務員の期末手当における加算に合わせているのです。そして、国家公務員の期末手当における加算は、前述の「人事院勧告」から明らかのように、民間で言う「役職手当」を国家公務員の期末手当に加算するものであります。そのため、国会議員の場合でも、民間で言う「役職手当」を「国会法」を根拠として実質的に加算するのであります。

ならば「国会法」のような根拠法がない枚方市議会議員の場合に、民間で言う「役職手当」を実質的に加算支給してしまうと、厳格な地自法203条、204条、204条の2から違法の評価を受ける事になります。地自法203条4項と204条2項は厳密な規定であるからでございます。

(3)学陽書房「新版逐条地方自治法〈第2次改訂版〉」松本英昭・著の625頁には、「かつて議会の議員等に対して研究費、立会手当、定額旅費等の名目をもつて給付がなされていた例もあつたが、第204条の2の規定が設けられたことから、法律又はこれに基づく条例に特に規定のある場合の外」、「報酬及び費用の弁償(議会の議員については、このほかに条例の規定がある場合は期末手当)」の「種類の給付以外のものはいかなる名目をもつてするも支給できないものである。」とございます。

さらに同書の627頁には、地自法203条4項につきまして、「議会の議員に対する期末手当の支給については問題もあるので、慎重であるべきであるという見方もある。つまり、そもそも期末手当とは、現在の給与体系からすれば国又は地方公共団体から生活給的色彩を持つ給与を受けている職員、たとえば、給料を受けて自己及び家族の生計を維持している常勤職員についてなじむものであり、純然たる勤務に対する反対給付としてのみの意味をもつ報酬を受けている非常勤職員については、本条の適用に当つては、額の決定その他について慎重に考慮をはらうべきとするものである。」とございます。

このような地自法203条4項の適用に当っての「額の決定その他について慎重に考慮をはらうべき」という要請は、地自法の趣旨から導き出される要請でありますが、被告枚方市長は、同上準備書面1(4)において、『「役職者加算制度」という表現は、基礎金額として一定の率を加算するという算定方式(加算方式)を指すものであり、これ自体によって加算方式によって算定された手当が「役職手当」であるということを意味するものではない。』と申し述べておられます。

 しかしであります。前述のとおり、市議会事務局庶務課長が、「人事院勧告に準じて20%の範囲内の加算を行いまして、市長などの役職及び市議会議員についても、国会議員とは異りますが、同様に加算を行う」と答弁されておられます。

 また、前述のとおり、被告枚方市長は、「本市の市議会議員に支給される現行の期末手当の支給率や加算率につきましては、人事院勧告に基づき」と答弁されておられます。

さらにです。前述のとおり、市長公室長が、「枚方市報酬及び費用弁償条例の第2条第2項の改正でございますが、職員の期末手当について御説明申し上げました役職者加算制度を、議員の期末手当にも導入させていただく」と答弁されているところであります。

よってであります。同上準備書面1(4)における被告枚方市長の『「役職手当」であるということを意味するものではない。』との主張は、枚方市議会議員の場合には、甚だ無理があるところです。補助参加人高橋伸介は、「役職手当」であることを自認している次第でございます。

また、「加算方式」という「方式」を強調した被告枚方市長の主張も、甚だ無理があるところです。すなわちです。「退職加算制度」、「扶養者加算制度」、「住居加算制度」という名称でございましたら、実質的に地自法204条2項の「退職手当」、「扶養手当」、「住居手当」であります事は至極当然の事であります。同様に、枚方市議会議員への「役職者加算制度」の適用は、実質的に地自法204条2項の「管理職手当」の支給であります。

このように、地自法203条4項の適用に当っては、「額の決定その他について慎重に考慮」が払われなければならず、実質的な検討が必要となります。

(4)被告枚方市長は、同上準備書面1(4)において、さらに、「市議会議員全員一律の算定方法(加算率も同じ)によって定められており、本件20%加算部分も「管理職」であることや「役職」に就いていることによる加算ではないことは言うまでもない。」と申し述べておられます。

 しかしであります。枚方市議会議員は、市長等特別職・部長級の職員と一般の職員を比較した場合、「全員一律」でも、議員という「管理職」「役職」の立場から、実質的には「役職手当」の支給であります。

(5)被告枚方市長は、同上準備書面1(5)において、『役職者加算制度を議会の期末手当にも導入させていただくため』とは、『加算方式における加算率を市長等特別職・部長級の職員の期末手当の加算率に倣って、「100分の20」に改めるという趣旨であり、期末手当に「役職手当」を導入することを意味するものではないことは明らかである。』と申し述べておられます。

しかしであります。補助参加人本準備書面4で述べさせていただきましたとおり、行政側資料(丙第1号証)では、原告が違法と主張する「加算部分」は全て「役職加算」すなわち「役職手当」「管理職手当」(地自法204条2項)とされ、実質上「期末手当」とは独立の項目として取り扱われているのでございます。

そのため、単に、「市長等特別職・部長級の職員の期末手当の加算率に倣って」加算がなされているのではなく、「民間の特別給の支給状況を踏まえ」、民間で言う「役職手当」、地自法で言う「管理職手当」が実質的に加算支給されているのであります。

丙第2号証の記事によりますと、「オンブズ・しまね」(松江市)の渡部美津子代表が、「加算を導入した時期を見てもまちまちで、地方議員の加算がお手盛りで明確な根拠がないことを表している」と批判しておられますが、枚方市において確かな事は、枚方市議会議員の期末手当に「役職者加算制度」が導入され、実質上、「期末手当」とは独立の項目として、「役職手当」「管理職手当」(地自法204条2項)が、補助参加人を含めました枚方市議会議員に支給されている事でございます。

(6)被告枚方市長は、同上準備書面2において、「これを受領した枚方市議会議員36名には枚方市に対する不当利得返還債務は存しない。」と申し述べておられます。

しかしであります。補助参加人高橋伸介は、枚方市に対する不当利得返還債務が、原告の言う「本件20%加算部分」の範囲において補助参加人高橋伸介に存している事を自認している次第でございます。また、他の枚方市議会議員35名も、地自法の該当条文に反している事を認識して、原告の言う「本件20%加算部分」を受領している事、明瞭でございます。

 

 よってであります。被告枚方市長は、枚方市議会議員36名(議員辞職者1名を含む)に対し、不当利得返還請求を直ちに行使されたい。

                               以上

 




証拠説明書

平成17年(行ウ)第142号 不当利得金返還(住民訴訟)請求事件

原告 前田敬暢

被告 枚方市長

補助参加人 高橋伸介 池上典子 伏見隆

 

                 証拠説明書

平成18年5月23日

大阪地方裁判所

7民事部 合2A係 御中 

                             補助参加人 高橋伸介

 

冒頭事件について、補助参加人は、下記の通り、その提出にかかる証書の説明をする。 

 

 

1、丙第1号証   市議会議員の期末手当における支給率の改定状況と加算率について

 

    この資料は、補助参加人高橋伸介が平成16123日に議会事務局より受け取った資料で、加算部分が「役職加算」であることが明白な資料であります。

 

2、丙第2号証   朝日新聞平成17年6月25日付記事

 

    この記事は、地方議員の期末手当における加算の部分が国会議員と異なり法的根拠の無い事を1面トップで指摘した記事であります。



丙第1号証 市議会議員の期末手当における支給率の改定状況と加算率について


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丙第2号証 朝日新聞平成17年6月25日付記事


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